2026年4月30日の夜、政府・日銀が為替介入に踏み切りました。
160円台後半まで進んでいたドル円が、一時155円台まで急騰。
……が、その後すぐ157円台まで戻しました。
「介入したのに、もう戻ってるじゃん」と思った方も多いと思います。
正直、私もそう思いました。今回はこの為替介入について、なぜ効きにくいのかを整理してみます。
今回の為替介入、何があったの?
まず事実整理から。介入直前の状況はこんな感じです。
- 日銀が利上げを見送り → 円安加速
- FOMCを通過してもドル高が続く
- 中東情勢の悪化も重なり、円・株・債券のトリプル安
- ドル円が160円台後半と、2024年7月以来の水準まで下落
財務省の三村財務官が「断固たる措置をとる時が近づいている」「これは最後の退避勧告だ」と
かなり強い発言をした数時間後に、介入が実行されました。
政府・日銀が4月30日夜に円買い・ドル売りの為替介入を行い、ドル円は一時155円台まで急騰した。
介入の規模は5兆~6兆円とみられる。
ただ、その後はじわじわと戻し、157円台で落ち着いています。
5〜6兆円を使って、2円しか動かなかった、というのが正直なところです。
そもそもなぜ円安が進んでいるのか
今回の介入の話をする前に、そもそもの円安の原因を整理しておきます。
一言で「円安」と言っても、要因が複数絡まっているんですよね。
① 日米の金利差
一番大きな要因はこれです。
米国の政策金利は3.5〜3.75%、一方で日銀の政策金利は0.75%程度。
約2.75%もの差があります。
金利が高い通貨の方が「持っているだけで増える」ので、投資家はドルを買い、円を売ります。
② 貿易赤字の定着
かつて日本は「輸出大国」として貿易黒字を稼いでいましたが、今は違います。
2010年まで過去30年間ずっと輸出額が輸入額を上回って貿易収支は黒字が続いていたが、2011年に31年ぶりに赤字となった。大震災後に原発が停止し、火力発電用のLNGを中心に輸入が急増したことが主な原因だ。さらに製造業の海外生産シフトが進み、輸出も伸び悩んだ。
輸入するたびにドルを買って円を売る必要があるので、これが継続的な円売り圧力になっています。
③ デジタル赤字の拡大
あまり知られていませんが、これも地味にきいています。
NetflixやAmazon、Google、クラウドサービスなど海外デジタルサービスへの支払いが増え続けており、
デジタル赤字は2024年に約7兆円で、既に資源輸入と同じくらいの額に達している。
出典:「円安はもう終わらない」デジタル赤字の隠れた影響|JBpress
これらの支払いもすべてドルで出ていくので、円売り圧力になります。
④ 実質金利のマイナス
日銀が少しずつ利上げをしているとはいえ、物価上昇率を加味した「実質金利」で見ると話が変わります。
円安の主因は「実質金利マイナス」にある。日本の政策金利は0.75%だが、賃金ベースのインフレ率は3.7%で、実質金利はマイナス約3%。名目上の金利が上がっていても、円で持っているだけで実質的な価値が目減りしていく状態では、世界の投資家が円を買う理由がない。
出典:【ドル円見通し総まとめ】円安の主因は「実質金利マイナス」|外為どっとコム
介入が「対処療法」でしかない理由
上記を踏まえると、今回の為替介入がなぜ根本解決にならないかがわかります。
為替介入は「時間稼ぎの政策」であって、円安基調そのものを変えるものではない。
出典:大型連休のはざまにドル売り円買いの為替介入|野村総合研究所
円安の根本は金利差と構造問題にあり、為替介入によって円安基調を変えることはできない。
出典:政府の為替市場介入で一時的に円高が進行したが、為替介入で円安基調を変えることはできない|Yahoo!ニュース
底流に構造的円売り——限界透ける為替介入。
出典:追い込まれた政府・日銀 限界透ける為替介入|日本経済新聞
介入の意味がゼロというわけではなく、「急激な変動を和らげる」「投機筋をけん制する」効果はあります。
ただ、トレンドを変えることはできないというのが市場関係者の共通認識です。
実際、155円まで動いてから数時間で157円台に戻したのがその証拠です。
結論:複雑に絡まった問題に特効薬はない
円安を本当に解消しようとすると、こんな話になります。
- 日銀がもっと利上げをする → 住宅ローンや企業の借入コストが上がり、景気に打撃
- 貿易赤字を解消する → 製造業の国内回帰は一朝一夕にはいかない
- デジタル赤字を減らす → 国産クラウド・サービスの育成が必要だが時間がかかる
- 実質金利をプラスにする → 賃上げが物価上昇に追いつかない状況が続いている
どれも「すぐ直せる」ものではなく、しかもそれぞれが絡み合っています。
今回の為替介入は5〜6兆円という大規模なものでしたが、
それでも155円→157円という結果を見ると、対処療法の限界を感じずにはいられません。
「じゃあどうすればいいのか」という単純な答えは出ません。
ただ、少なくとも「介入で解決する」という話ではないことは、今回改めてはっきりしたと思います。
個人的には、円安が続く前提で外貨資産を持ち続けることが、
今できる現実的な対応かなと思っています。
※本記事は個人の見解をまとめたものです。投資は自己責任でお願いします。